◆深層の大循環(第2話)
浅い海と深い海をつなぐ環(わ)で一番大きな環は、深層大循環と呼ばれています。
南極や北極付近で起きる一番大きな水の環を深層大循環とよんでいます。
深層大循環は、難しくいうと「熱塩循環」とも呼ばれる水の環(わ)です。この循環を引き起こすエンジンは海水の重さです。南極や北極付近の表層の海水は、大気から強く冷やされるために重くなって沈んでいき、それまでに深層にあった海水を押しのけながら全海洋の深層を巡って、再び深層水は表層水と混じり合いながら上昇して暖かい表層水になります。そしてみたび、深層水のできるグリーンランド沖に戻っていくベルトコンベヤーのように廻る大きな流れになります。
この流れを、提唱者にちなんでブロッカーの深層水のコンベヤーベルトとよんでいます。この様子を模式化した図があります(見たい人はネットで、“ブロッカーのコンベヤーベルト”で検索すれば出てきます)。
海洋学者によって様々な意見がありますが、おおよそ深層水の平均年齢は1,000歳で、深層海流が沈降してから浮上するまでに1,500〜2,000年の時間がかかると考えられています。
表層水が深層に達するまでに強く沈降する海域は、北大西洋のグリーンランド沖と南極付近のウェッテル海に限られています。グリーンランド沖でできた深層水は大西洋から南極まで南下して、南極付近にできた深層水と合流した後、南極大陸の周りを通ってインド洋と太平洋を巡っていきます。
深層海流は表層海流に比べると、桁違いにゆっくりとした流れです。どのくらいゆっくりかというと、深層海流は時速約3.6m / 時間の流れで、表層海流の流速を5km / 時間とすると約1,400分の1の本当に遅いスピードです。カタツムリの這う速度に比べても深層海流の進む速度は半分ぐらいになります。
もし、この海水を運ぶベルトコンベヤーが地球の温暖化でストップしたら、地球の気候変動や食料供給に大きな影響が出てきて、私たち地球に生きているものすべての生命が危機に直面させられるかもしれません。そうならないためにも、地球温暖化や海洋の基礎研究が必要になってきています。海を研究する若い人たちが、今、求められる時代になっています。
(環(わ)2010.7)