◆レジリエントな話(第6話)

レジリエンスな話

 「日本の防災の課題と展望」、持続可能なレジリエント社会を目指して(東日本大震災と近年豪雨災害の教訓に学ぶ)という演題の講演会にたまたま参加しました。そこで、あまり聞き慣れない言葉「レジリエントな社会(レジリエンス:Resilience)を耳にして、私なりに調べてみました。

レジリエンスという言葉 〜 21世紀型の言葉? 〜

 心理学分野では、困難で脅威的な状況にも関わらず、うまく適応する過程・能力・結果のことをレジリエンスと言い、近年では、変化する状況や予期せぬ出来事に対して十分な適応を示し、利用可能な問題解決策のオプションを選択できるという拡張した意味で、レジリエンスの概念が整理されています。

 これまでの自然災害への対策は、長期的に観測と蓄積されたデータを用いて災害外力を確率的に評価し、自然災害などの対策に導入する手法が確立されていました。自然の変動性が安定しており、定常的な確率過程であるという前提で確率論的に起きている自然災害に対して対処していくという考え方です。

 今、そのやり方が不可能に近いものも出てくる時代、過去データでは推定できない時代がやってきているということのようです。これが「レジリエンス」とい言葉が出てきた背景にあります。

想定外という言葉

 ここで余談ですが、東日本大震災のとき、国が原発事故の状況説明で多用した「想定外」があります。

 自然災害に「想定外」はあってはならないと思いますし、想定外で済むのであれば、こんな楽な対処方法はありません。ただ単に予測出来なかった、予測以上のものであったということで、災害で起こる事態を予期することができなかったということを暗に認めた様な言葉であり、もっと辛辣に表現すれば過失?をごまかすようなニュアンスさえ含まれているような気がします。

 これからは、自然災害に対して、こんな安易な言葉は使って欲しくありませし、それが国民を守る発言であれば尚更だと思います。

レジリエンスのある社会

 これからは、自然災害で起こる「想定外のリスク」の存在を明らかにする努力を国として行い、徹底したリスクアセスメントを実施していく、専門家と現場の実務者を養成しつつ、現場で迅速に対応するために専門家と協議の場を地域ごと設置するなど、リスクアセスメントから想定されることの対策を検討しながら、地域住民との合意形成を進めていく必要があると思います。これからは “レジリエンスのある社会”、レジリエントな社会づくりを目指して欲しいものです。

日本で災害の発生しなかった時代、高度成長期だけ

 日本は、なぜこんなに経済成長を遂げることができたのか?もちろん国民の皆さんがものすごく努力したことはもちろんですが、高度成長期には激甚な災害が発生しなかったことも事実です。災害的には非常に安定した時代であったということが言えるのです。下の表に明治以降死者不明者が1,000人を超える災害等を表にまとめたものです。実に36年間災害が起きていないのです。日本にとってはまるで奇跡のような時代が続きました。

表 明治以降死者不明者が1,000人を超える災害等

これからは、覚悟しなければならない時代が始まる?

 災害が起こってから想定される被害には不確実性がたくさん含まれています。
私たちは、これから起こるかもしれない災害に対して、想定されていない何かが起こるかもしれない、ですから、突如として現れる自然災害に対して覚悟しなければならない、そんな時代が始まっている様な気がします。

(環(わ))