音へのいざない(第5話)

魚群探知機の原理は音の反射ですが、この音域より周波数が低いものは海底の地層も判別することができます。
水産とはあまり関係がありませんが、私たちの生活の身近な音の話題を取り上げてみました。

生活環境には音があふれています。必要なもの、そうでないもの、好ましいもの、そうでないもの、ある人にとっては気にならない或いは好ましいものであっても別の人にとってはそうでないもの、そんな音ですが音についてあれこれ調べたことがあるという人は殆どいないと思います。

1996年、現・環境省が音環境を保全する上で意義があるとして選定した日本の音風景100選というものがあります。これは日本全国のよく知られている施設、自然或いはお祭りなどの音です。例えば群馬県の「水琴亭の水琴窟」。水琴窟とは、土中に瓶のようなものを埋め小さな入り口から水滴を落下させると、底に溜まった水面に衝突する時に心地良い音が発生するというものです。全国各地にありますので一度味わってみてはいかがですか。

話は変わりますが、寒い夜に、いつもは聞こえない遠方の汽笛やサイレンなどが聞こえたという経験はありませんか。何故そんな現象が発生するのか調べたことがある人はあまりいないと思います。光が屈折することはよく知られていますが音も屈折します。屈折は密度が異なる媒質の境界を通過する時に起こります。大気中の気温は普通、上空にいくほど下がってくるものですが、冬の寒い時季には上空の方が地上より高くなることがあります。この時、大気の密度は、はっきりとした境目があるわけではありませんが上空の方が小さくなっています。このような時の大気中を音が伝播すると僅かですがやや下向きに音の方向が変わります。これが連続して発生すると、より遠くの音が聞こえたりします。
ちなみに、上空の大気中の気温が低い場合は、上向きに屈折するので遠方の音が聞こえ易くなることはありません。

冒頭にもふれたように音の性質を利用して、魚群を見つけたり、海底地層を判別するほか、音で物を洗浄したり破壊したり、また音で音を消すこともできます。ドップラー効果を利用して警察はスピード違反を取り締まる「ねずみ捕り」などを行っています。

又、騒音に係るもので環境基本法に基づく環境基準、騒音規制法はじめ多くの法律があります、さらに騒音の測定方法、測定機器、解析方法、音楽の基準などが日本工業規格に定められています。

最後に人間ドックを受診された方は覚えがあるかもしれません、聴力検査では必ず1000と4000ヘルツの周波数帯の聞こえ具合を調べます。これはなぜでしょう? 少し音について興味を覚えたなら調べてみてはいかがでしょうか。                 

(mima:2012年11月)